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日本の電力産業の現状と課題
              2010.11.5 芝浦工業大学 根津光雄
1. 「生活が豊かになる」とは、エネルギー消費が電力消費になることである
どこの国でも、何時の時代でも、「生活が豊かになる」あるいは「生活水準が上がる」ということは、所得と消費が増えることである。エネルギーでは、エネルギー消費が増えることである。しかし、これには二つの面がある。一つはエネルギー消費量そのものが増えることであるが、もう一つはエネルギー消費が電力消費の形でなされる割合が増えることである。これは家庭生活だけでなく、産業部門でも交通部門でも同じである。便利で効率が良くなり、クリーンになる。

ところが、化石燃料を燃やして発電すると、最新の設備を使って最も効率(熱効率)を上げても、その化石燃料燃焼で発生する熱エネルギー量の45%程度しか電力エネルギーとして取り出すことができない。残りの55%は消えて無くなってしまう。つまり、電力エネルギーは便利でクリーンではあるが、無駄の多い贅沢なエネルギーなのである。これは、人類が行う発電方式、つまり誘導電流を使った発電機を使う発電方式に頼る限り避けることができない。原子力発電も水力発電も同じで、例外は発電方式が全く違う太陽光発電だけである。しかし、原子力や水力は化石燃料を燃やすわけではないのでCO2が発生しない。日本政府が原子力推進と太陽光発電や風力など「新エネルギー」にこだわる最大の理由である。現在、日本中で人為発生するCO2の3分の一は火力発電所からなのである。水力はダムを作ることによる環境破壊指摘が日増しに強くなっている。

国全体で、一次エネルギー供給総量の中で発電に使われる一次エネルギー供給量の割合を、その国の「一次エネルギー供給の電力化率」といい、最終エネルギー消費量の中で電力の形で使われるエネルギー消費の割合を「最終エネルギー消費の電力化率」という。日本の場合、近年の政府発表の2006年度エネルギー・バランス表でみると、前者が42%で、後者が21%である。20年近く以前の1990年度でも42%と20%であった。国別比較では、双方とも、アメリカが高い。

ついでに2008年度の「一次エネルギー供給の電力化率」を石油だけで見ると12%、石炭のそれは55%、天然ガスのそれは68%であった。同様に、2008年度の「最終エネルギー消費量の電力化率」を産業部門だけで見ると18%、業務部門は40%、家庭部門は46%、運輸部門はたったの2%に過ぎないが、運輸部門の中でも鉄道だけで見ると90%であった。なお、この「最終エネルギー消費量の電力化率」は、わが国では大都市も農村もほとんど変わらないが、国によってはこれが大きく変わってくる。電化されていない、つまり電力が来ていない地域があるからである。逆に、日本はどんな田舎でも、離島でも、管轄する「一般電気事業者」に供給義務が課されているからである。それが、電気料金が高くなる原因にもなっている。 

2. 日本の電気事業の現状・特徴
2-1電力需給の規模――世界で3番目
 2009年度の日本(日本の年度はその年の4月から翌年の3月末の1年)の総発電量は1兆1130億kWhで、米国、中国に次いで世界で3番目であった。対前年度比では2.9%減、過去10年間では年率1%の伸びであった。うち電気事業用(=電力会社の電力販売量)は85%、自家用(大手電力需要家や電力会社自身の自家消費発電量)は15%であった。また、同年度の日本の総発電量を電源別に見ると、火力が67%、原子力25%、水力8%で、太陽光・風力・廃棄物発電など「新エネルギー」はこれに地熱を加えても合計でも0.3%であった。

電力消費量を2008年実績で見ると、日本は米国、中国に次いで世界で3番目、世界の6%を占めている。日本は電力の輸出入がない。世界の2%の人口で世界の6%消費とは、人口一人当たり世界平均の3倍の電力消費をしていることになる。これは米国のそれの半分、中国の6倍である。一次エネルギーの投入量もその電力化率も大体これに平行している。

また、2010年3月末時の日本の総発電施設能力は2億8110万kWで、対前年比1.3%増、過去10年間では年率1.0%増であった。内訳は事業用(電力販売用の発電施設)が84%で自家用が16%であった。電源構成では、火力が65%、原子力が17%、水力が17%、太陽光・風力・廃棄物発電など「新エネルギー」は、地熱と合わせておおよそ1%であった。

2-2日本の電力産業の特徴
電力供給が国営の公社の独占になっている例は、発展途上国だけではなく、フランスやカナダなど先進工業国にもある。先進工業国でも、純粋な民間ビジネスにして、徹底した自由競争が一番よいとする米英両国でも、「公益事業」(Public Utility)として、国民生活と産業のニーズを満たすため安定供給義務を負うかわりに、何らかの保護を受けている。その内容は、政府資金供与や税制での恩恵を受けているし、何らかの形での競争制限、つまり新規参入の抑制まで色々である。

日本の場合、いくら安価の電力をいかに安定供給できようと、新規参入者が、全国に10社ある「一般電気事業者」と同じビジネスはできない。全国を10の区域に分けて10社ある「一般電気事業者」は、資本は全くの民間の株式会社であるが、その事業環境は国内他の産業のそれとも、英米など他の先進諸国の電力産業のそれとも、大きく異なる。

その内容は、他の先進工業国に較べ、安定供給義務ははるかに厳しいが、その代わり絶対確実な経営基盤を保障されていることである。それは、特定地域内での安定供給を遂行させるため、(1)その特定地域内での発・送・配電の一貫操業の独占と(2)総括原価方式による料金設定の2点である。前者では特に送・配電網の独占保有の意味が大きい。後者では、電気料金設定が「公正報酬」を得ることを保障した「総括原価方式」でなされ、決して赤字操業にならないような料金設定を保障されている。そのため社債の利息支払いと株式配当が保障され、資金手当てで行き詰まることがないようになっているのである。

当然ながら、こうした現行制度は歴史的経緯による。発電をすべて国が独占してきた戦時体制が終った1945年、敗戦により全国土が焦土と化し、資金は全くなかったが、石炭と水力という天然資源があった。経済復興第一の戦後の経済政策の基本は石炭の傾斜生産(継続的な増産を進めること)による製鉄と、水力発電所など電力への集中投資を可能にする体制作りで、振り返ってみると、ともに大きな成功を収めた。

1945年に終わった第二次世界大戦で連合軍に占領された日本は、石油産業を一切禁止された。しかし、まだ米軍の占領下にあり独立国にもなっていない1949年(51年に独立)に、隣の朝鮮半島での戦争遂行のため大量の石油調達を迫られた米政府は大急ぎでわが国に石油精製をさせることにした。一度は全面禁止した太平洋側の工業地帯の石油精製業再開を許可した。そればかりか、コスト従って価格が安過ぎて国内石油産業が破壊されるゆえ、自国である米本国にも輸入できない中東原油を、米英メジャー石油会社は、製油所建設のための資金と技術供与までして日本に与えた。

こうして世界に例を見ない極端な石油漬けの日本の経済高度成長は1973年の石油危機まで続く。日本の石油依存度がピークになった1973年度には、一次エネルギー供給中の石油のシェアが77%で、「発電にまで石油を燃やす困った国」(1979年6月に東京で開かれた先進国サミットでの各国からの指摘)であったが、35年後の2008年度には、これを44 %へと大きく落ちた。

二度の石油危機で苦しんだ日本は、以前にも増して「エネルギーの安定供給」指向を強めた。結果として、規制緩和つまり競争を促進して電気料金や石油価格を引き下げることによる産業の国際競争力強化とは逆の方向を目指すことになった。電力も石油も都市ガスも、問題が起こるとその対処療法議論では、業界も役所も政治家も必ず「規制緩和」あるいは「自由化」というが、実際には安定供給のための政府の役割を強化する施策になる。2002年にできた「エネルギー政策基本法」も、エネルギーの安定供給には国が責任を持ち、国がエネルギー供給の長期計画を作り、それに沿って業界を指導するという内容である。反論があると、常に「安定供給が損なわれる危険がある」、となる。

2-3電力会社(=電気事業者)の種類
2-3-1 「一般電気事業者」
現在わが国の「電気事業者」(=電気を販売する者、自家用だけならどんなに大きくても電気事業者にならない)には制度上(必ずしも法律上の区分ではない)次の種類があり、それぞれの役割分担は以下のとおりである。これこそがわが国の電気事業体制を特徴づける仕組みである。示したシェアのとおり、全国土を10の地域に分け、各地域に1社だけある「一般電気事業者」の地位は圧倒的である。一般電気事業者はその安定供給責任を果たせるよう、種々な形で、一般電気事業者向け電力の卸売りをする発電会社にバックアップされている形になっている。

2010年3月末現在で、10社合計の発電施設は国内総計の73%を、事業用発電施設では84%を占める。2009年度の発電量では国内総計の70%を、事業用発電量の84%を、消費者に直接売る「小売」電力販売量の99%以上を占めた。

2-3-2 卸電気事業者
①大口卸電気事業者―――一般電気事業者向けの電力卸売りのために作られた国策会社で、電源開発㈱(施設1,699万kW――2010年3月末、以下同じ)と、日本原子力発電㈱(施設262万kWの2社がある。両社合わせた発電施設は国内事業用計の8.3%である。(一方が小売で他方が卸売では、小売の重複計算になるので、電力販売量で比較しても意味がない) 。
②共同火力―――二つ以上の一般電気事業者が合弁で、あるいは一般電気事業者が製鉄など大口需要家と合弁で作った多くは「・・・共同火力」といわれる16社。合計発電施設は980万kWで国内事業用計の4.1%である。株主でもある大口需要家向け販売量以外は全量一般電気事業者に卸売りされる。
③公営電気事業者―――地方自治体が経営する20社。昔電力が不足する時代に自治体が作った水力発電所(1ヶ所だけ風力)で、合計発電施設は国内事業用計の0.6%である。自家消費以外は全量一般電気事業者に卸売りされている。
④独立系発電事業者(=IPP=Independent Power Producer)―――-- 1995年の電気事業法改正で1996年4月から始まった制度による。従来自家発をも行っていた鉄鋼・セメントなど電力大口需要家が一般電気事業者の行う競争入札に応札して、一般電気事業者向けに電力の卸売をする。IPPの「独立」とは一般電気事業者の資本参加がないこと。しかし次項のPPSが2000年3月に登場いた以降はIPPの届け出はなくなり、PPSに転向したりした。現在その発電施設は国内事業用計の0.1%に過ぎない。

2-3-3 特定規模電気事業者(=PPS=Power Producer and Supplier)―――2000年3月21日に施行の電気事業法改正で生まれた特定大口小売電気事業者。 日本で現在の電力供給体制が出来て半世紀、一般電気事業者10社以外で初めて小売ができることになった。2010年3月末時点の特定規模電気事業者は35社であるが、2009年度の合計販売量は国内電力小売の1%程度に過ぎない。多くが石油火力であるため、石油の高騰で採算が厳しく、休業している参入者もいる。

3.電力産業の構造改革=規制緩和=自由化
3-1. 背景
 第二次世界大戦後の経済復興が一段落して1970年に入ると、欧米先進諸国は、引き続き経済成長を続けるには経済・産業社会の規制緩和のニーズに迫られるようになった。金融・通信・エネルギーとその対象は広がるが、90年代に入ると英米の電力産業でそれが加速してきた。欧米諸国経済の拡大期golden 60sが終わるころ、日本は経済の高度成長期を迎える。日本の電力体制は1964年に制定の電気事業法で確立され、理想的なかたちでその効果を発揮した。

しかし1990年代に入って、バブル経済の破綻と円高による景気後退で、日本でも規制緩和の要請が高まってきた。電力の規制緩和要請の背景と論点は①「規制緩和」の一般風潮 ②電力需給逼迫化への対応 ③電力料金の内外差、である。②は、需要面では需要の伸びが産業部門から民生部門に移行し始めたことによる負荷率の低下、供給面では発電所建設のリードタイムが長くなってきたこと、それにコジェネなど分散型発電が増え採算も採れるようになってきたことである。特に重要な③については後述する。

3-2電事法95年の改正――1996年4月にIPP(Independent Power Producer)が誕生
1995年5月、日本は1964年の公布以降31年ぶりに電気事業法の根本的な改正を行った。その結果、発電部門に限って、新規参入が認められるようになった。この「発電部門に限っての新規参入」とは、一般電気事業者の行なう競争入札に応札して、一般電気事業者向けの卸売をするだけで、自ら小売はできない。

3-2 電事法99年の改正―――2000年3月にPPS(Power Producer & Supplier)が誕生
1999年5月にできた法律で、それまで一般電気事業者以外に禁止してきた電力の小売を解禁する電気事業法の改正案が国会で可決、翌2000年3月21日に施行された。なお、約3ヶ月後れて事業規制とは別に同法の保安規制も改正された。これにより「特定規模電気事業者」(PPS=Power Producer and Supplier)が生まれた。
経済産業大臣への届出により、一般電気事業者以外の新規事業者でも、使用電力が2千キロワット以上の需要者に対してのみ、一般電気事業者が所有・運用する「特別高圧電線」(=2万ボルト以上)を使って直接小売できるようになった。厳しい条件付きとはいえ、わが国で始めて一般電気事業者以外の者が電力の小売をできるようになった。電力の「部分自由化」あるいは「大口小売に限っての自由化」といわれる理由である。

この際問題になるのは、この特定規模電気事業者が一般電気事業者から借りる特別高圧電線の借り代、つまり「託送料金」である。これが高いと、新規参入促進といっても、現実には参入できなくなるので、この際の契約つまり「接続供給約款」を公正なものにするため、一般電気事業者はそれに関する系統経費を他の経費と切り離して公表することが義務づけられるようになった。2010年3月末現在、届け出済みの特定規模電気事業者(PPS)は35社、大部分が石油火力である。2009年度の合計販売電力量は1535万kWhであるが、まだ国内計の1%強に過ぎない。

 3-3 電事法2003年の改正―――「大口小売」の拡大
 2000年3月施行の電事法改正で3年経過後再度これを見直しすることになっていたこと、2002年に「エネルギー政策基本法」ができたことで、「供給システム改革による安定供給の確保、環境への適合およびこれらの下での電力・ガスの供給に関する需要家の選択肢の拡大を図るため」、再度電気事業法とガス事業法が改正された。

2003年6月にできた法律では、11日に国会で成立した法律(施行は項目によって異なる)は、「電気事業法およびガス事業法の一部を改正するなどの法律案」と、両事業法とそれぞれの施行規則や関連法規の改正をまとめて一本の法案になっているが、アメリカの停電が日本の電気事業法とガス事業法改正議論に大きく影響し「安定供給の確保」が前面に出され、1990年代後半~2000年に主流になってきた英米などの「発・送電の分離」あるいは「送電線の解放」議論は大きく後退した。
①「発電から小売まで一貫した責任者をおく現在の電気事業体制を存続し、発送電分離といった構造改革をしない」ことを明記した。
②大口小売(上記PPS)自由化適用範囲の拡大。小売への新規参入は、それまでの「使用電力が2千キロワット以上の需要者に対して」が、2004年5月からは「500キロワット以上」に、2005年4月からは「50キロワット以上」になった。なお、需要家に対しては一般電気事業者が緊急時のバックアップ保証を提供することにした。
③電気は送配電網(都市ガスのことがあるのでネットワークという言葉になっている)を用いて始めて供給ができるゆえ、この部門は公共的なインフラと位置付け、新規参入者を含めて各供給主体が公平かつ透明な形でアクセスできるよう一定のルールを導入する。さらにその運用状況を監視する中立機関(行政は入らない)を設ける。
④広域運用制度の改善。二つ以上の供給区域を跨いで送電する際、区域が変わるごとに託送料金を支払う現行制度を排除するなど、広域運用制度を改善して、安定供給を増進する。
⑤電源開発投資環境を整備する。一つは原子力の投資リスク軽減で、リスクを取引価格に反映し、従来の相対取引一本から私設・任意の市場創設などを考える。また、分散型発電投資を促進するため、二重投資による著しい弊害がある場合を除き、コジェネなどの新規参入者に対しては上記PPSの発電所まで自前の送電線を引けるようにする。
⑥環境適合を促進する。具体的にはCO2の出ない原子力増強のため、広域流通の強化・促進策や卸取引の促進、天然ガスパイプライン網の整備などである。

3-4  家庭向け小売自由化は当面見送り決定
2007年7月11日、総合資源エネルギー調査会の制度改革ワーキンググループ(WG)は、小売り自由化対象を家庭部門に広げることについて、「現時点での自由化範囲の拡大は望ましくない」とし、電力小売りの全面自由化は見送られることになった。電力小売市場に新規参入した「特定規模電気事業者」(PPS)の電力販売シェアは1%強に過ぎない。
4. 今後の課題
  4-1日本は世界で電力料金が最も高い国の一つ 
 米政府のエネルギー省はDOE-EIAという超巨大なHPを掲げている。そのInternational Electricity Information には、国別の電力料金が、industry/households 向けに分けて、2008年8月見直し版が載っている。ここに紹介するのはindustry向けだが、households 向けも他国との比較は大体同じである。数年前に較べ、日本の突出ぶりが多少減ったが、OECD加盟先進工業国の中では依然イタリアと並んで、電力料金が世界で最も高い。一般に途上国の電力料金は安い。国の事業で、補助金が付いているからである。一部中南米諸国の料金が高い国は、国土が狭く発電施設規模が小さいためである。

4-2 電力の小売では、新規参入者(=PPS)のシェアはまだ1%強に過ぎない 
新規参入者を呼び込んで競争を促進するという当初のかけ声とは大きく異なり、現実に起こったことは、文字通りの「一部自由化」でその効果は心細い。2000年3月に制度が発足してすでに10年半、自ら小売販売ができるPPSの販売シェアは国内計の1%強に過ぎない。急騰して高止まりの石油火力以外に可能性のない新規参入者の採算は極めて厳しく、早々に撤退する参入者も出ている。

4-3 構造改革議論の行方
料金の大幅引き下げには構造改革が必要という議論以外にも、日本の電力供給をめぐる問題は数多い。排出CO2を減らすには原子力や天然ガスや新エネを増やさなければならないが、中長期的に見ると双方とも発電コストを相当膨らますだろう。それを料金に反映できないならば、どうすればよいのか。
さらに、施設建設のリードタイムが極めて長いのに、安定供給が求められるため、需要予測をして先行設備投資をしていかなければならないが、電力需要がこれまでのように伸びなくなってきた。それどころか、日本国内の産業空洞化が進めば、電力消費が減ってくる可能性すらある。すると、不要な施設を抱えた電力会社は、料金の値下げどころか、値上げしなければならなくなる。エネルギー政策基本法が決めたように、将来のエネルギー供給に国が責任を持つ、国がエネルギー基本計画を策定するというのは、果たして正しい選択だろうか。
 
「次期電力改革」議論があるとすれば、再度、発・送配電の分離が議論されるだろう。電力の需要家が電力供給者を自由に選べるだけでなく、その電力供給者を送配電業者だけにして、その送配電業者は公開の市場で発電業者を自由に選んで、できるだけ安い電力を買える制度にする、という構想である。イギリスは既にこれを実施済みである。アメリカでは、発/送配電を別会社にさせるというカリフォルニア州の構造改革論が、2000年秋から2001年初にかけての数次の停電で、2003年には完全に頓挫してしまった。日本では2003年6月の電気事業法改正の際、当面これをやらないと明確に決めた。アメリカの大停電と議論の影響が大きい。日本では、「安定供給が損なわれる」というと、議論はおしまいになる。しかし、構造改革問題は、国鉄、道路公団、郵政といった国の事業の民営化だけではない。エネルギー問題では、将来再度、電力の構造問題取り上げが不可避になる、という見方は依然かなり強い。

4-4 鳩山首相、2020年にはGHG排出量を1990年実績比25%削減すると国際公約
 本年2009年9月、就任早々の鳩山由紀夫総理大臣は国連で演説、日本がCO2を中心とする温室効果ガス(GHG=Green house Gas)排出量を2020年までに1990年実績比25%削減することを宣言した。2008~2012年が約束の刻限であった京都議定書の約束は、同じく1990年実績比で6%削減であったのに対し、2008年度実績は、削減どころか7.4%増であったことを考えれば、今後10年間に1990年実績比25%削減という鳩山公約の達成は極めて難しい。それでも国際公約である。京都議定書が特定するGHGはCO2をCO2含めて6つあるが、日本の場合CO2が90%とGHG全量の大部分を占める。日本で人為的に排出されるCO2(自然現象は条約のカウント外)の約3分の1が発電所からである。ロシアなど海外から排出権を購入するという議論もあるが、急速に厳しくなるわが国の外貨事情を考えると難しい議論になるだろう。このため、2010年6月に策定した政府の「エネルギー基本計画」では、水力や太陽光などを含めた「CO2ゼロエミッシオン(zero emission)電源を、2020年には全発電量の50%に、2030年には70%にする」という大胆な目標を定めた。大部分が原子力になることは避けられない。そのための原発の新増設計画と工事は、現在のところ、大きな反対運動もなく、極めて順調に進んでいる。
 
2-1にて既述のとおり、2009年度実績で、日本の総発電量に占める原子力の割合は25%であったが、これは、日本の総発電量の3分の1を担う東京電力の柏崎刈羽原子力発電所が2007年2月の地震で被災し、大部分が未だ運転停止になったままであるためである。これがなければ30%程度は期待できた。現在国の目標は総発電量に占める原子力の割合を40%程度にすることで、この目標に向けて原発の新増設計画は順調に進んでいる。

原子力に関しては、2009年11月に九州電力㈱で初めて、その後順次他の電力会社でも、ウラニウム燃料に少量のプルトニウムを混ぜた燃料を使う運転が始まり、わが国もプルトニウム利用の新しい時代を迎えた。これは一部欧州諸国では既に行ってきたが、アメリカでは行っておらず、オバマ政権になって改めてやらないことを決めた。核兵器拡散の危険を避けるためと、経済効果が期待できないため、と説明している。

 また、水力と地熱を除く再生可能エネルギーを日本では「新エネルギー」というが、発電量の大きい順に、ごみ発電、太陽熱利用、黒液(pulp char)や廃材などパルプ製紙業で出る廃棄物発電などである。発電だけで考えると、2009年度実績で、日本の総発電量に占める太陽光発電、風力、廃棄物発電などの新エネルギー発電の割合は国内総発電量の1%程度にしかならない。しかし、2009年9月に生まれた民主党政府は、原発推進と合わせて、太陽光発電や風力といった新エネルギー発電の飛躍的拡大を目指して、新しい政策を打ち出すとしている。

4-5 RPS制度の改善による太陽光発電拡大に期待
アメリカや一部EU諸国で行われているRPS制度(Renewable Portfolio Standard)が日本でも2003年にスタートした。2006年まで総施設能力も年間の施設能力増加も世界一であった日本の太陽光発電は、国による資金助成制度の廃止でドイツなどに抜かれてしまった。2009年度からの助成金制度の復活で再度太陽光発電ブーム回復が期待されている。一般住宅の屋根に取り付けたソーラーパネルで発電をして、自分で使って余った電力を購入してきた電力会社(=一般電気事業者)に買い取らせる制度である。その電力会社から電力を買う価格と同じ単価で電力を売ることになる(規模のモデルケースで¥24/kWh)。

さらに2009年11月からは、電力会社の買い取り価格を倍額にして導入インセンティブが拡大された。さらに2010年になってからは、電力会社は、発電施設を設けた住宅などから、自分が使って「余った分だけ」を買い取るのではなく、電力会社がいったん「発電量全量」を買い取り、自分の使う分は電力会社から買うという「売買並列」制度の導入が議論になっている。全量買い取らせるのであるから、施設を設けた住宅は収入が増えるが、自分が購入する電力料金も上がることになる。それでも普及インセンティブの飛躍的拡大になる、という議論である。

添付資料:  1.電気料金の国際比較(出典:米エネルギー省エネルギー情報局)
       2.発電燃料構成の国際比較(出典:米エネルギー省エネルギー情報局)

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